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高さ120cm超の塀には『控え壁』が必要。知らなきゃ危ない、建築基準法の話

高さ120cm超の塀には『控え壁』が必要。知らなきゃ危ない、建築基準法の話

熊本県のTFシリーズ認定施工店、株式会社サトウ塗装です。弊社は塗装会社ですが、TFシリーズ認定施工店で TF WALL(TFウォール) ももちろん取り扱っています。TFシリーズをまだご存じでない方は、弊社のTFシリーズページでご確認ください。

TFウォールを施工する一環から、弊社は塗装業者ですがブロック塀に関する内容を今回は解説します。

TFウォールの施工に携わるなかで、塗装業者である私たちもブロック塀の構造や安全基準に詳しくなりました。今回は、そんな立場から「控え壁」の必要性やその背景をわかりやすくご説明します。

高さ1.2mを超えるブロック塀には控え壁が必須

まず結論から申し上げると、ブロック塀を高さ1.2mより高く積む場合は、「控え壁」と呼ばれる補強構造が建築基準法上必要になります。控え壁とは、塀の途中途中で直角に突き出す小さな壁(=控え壁)を設けて塀を支えるもので、地震などで高い塀が倒れにくくするための補強です。裏を返せば、控え壁なしで安全に保てる高さはせいぜい1.2mまでということになります。1.2mを超えて高く積み上げたい場合は、法律の定める通りに控え壁などの措置を講じて構造を強化しなければなりません。

ブロック塀の高さ制限が設けられた理由

かつてはブロック塀の高さに明確な制限がなく、3mを超える塀や、モルタルや鉄筋で十分に補強されていない塀も存在していました。しかし、高く積まれた脆弱なブロック塀が地震などで倒壊し、繰り返し事故や被害をもたらした経緯があります。

その代表的な例が、2018年に発生した大阪北部地震でのブロック塀倒壊事故です。大阪府高槻市の小学校で高さ3.5mにもなるブロック塀が崩れ落ち、登校中の児童が下敷きとなり亡くなる痛ましい事故が起きました。調査の結果、この塀は建築基準法施行令で定められた高さ上限2.2mを大きく超えた違法状態であり、基礎と塀の固定もなく非常に危険な構造だったことが判明しています。こうした事故を契機に全国的に既存ブロック塀の安全点検が促され、危険な塀の撤去や改修が強く呼びかけられるようになりました。自治体によっては老朽・不適格なブロック塀の撤去費用に補助金を出す制度も整備されています。

例えば熊本市では、避難路に面した危険なブロック塀の撤去に対し最大20万円の補助金を支給し、安全なまちづくりを後押ししています。このように、高いブロック塀の安全性確保は社会的にも重要な課題となっているのです。

「控え壁」とは何か?その役割と効果

控え壁(ひかえかべ)とは、その名の通り塀を“控える”ための小さな壁のことです。ブロック塀の本体と直角に接するように途中で突き出して造られ、塀を側面から支える役割を果たします。イメージとしては、塀の裏側に等間隔で添えられた垣根の控柱や、L字型の足のようなものを想像すると分かりやすいでしょう。地震時などに塀が倒れる力が加わった際、控え壁があることで塀全体が一体化して踏ん張り、倒壊しにくくなります。特に高さのある長い塀では、控え壁がないと塀の中央部分が大きくしなって崩れやすくなるため、一定間隔で控え壁を入れて強度を補うことがとても重要です。

ブロック塀が一定以上の高さになると設けられる控え壁(赤く突き出した部分)の模式図。建築基準法では高さ1.2mを超えるブロック塀に控え壁を塀高さの1/5以上(2mの塀なら約40cm)突き出させるよう定められています。控え壁を設けることで塀の強度は格段に増しますが、その分敷地内が狭くなったり、見た目の面で制約が出たりするのが難点です。

建築基準法で定められたブロック塀・控え壁の基準

建築基準法施行令では、ブロック塀(正式には「補強コンクリートブロック造の塀」)の安全基準が細かく定められています。高さや厚さ、鉄筋、本数、そして控え壁に関してまで、以下のような条件を満たす塀でなければ新たに造ることはできません。

  • 高さ:塀の高さは2.2m以下とする(※控え壁なしの場合は1.2m以下が上限)。
  • 厚さ:塀の厚さは15cm以上(※塀高さ2m以下なら10cm以上)とする。
  • 鉄筋:塀の中には直径9mm以上の鉄筋を縦横とも間隔80cm以下で配置し、縦筋は塀の上下端の横筋に、横筋は縦筋にそれぞれしっかりとフック(かぎ掛け)して定着させる。
  • 控え壁:塀の長さが長くなりすぎないよう、長さ3.4m以内ごとに一本、基礎から立ち上げた**控え壁(塀高さの1/5以上の突出長さ)**を設けること(※塀高さ1.2m以下の場合は控え壁不要)。
  • 基礎:塀を支えるコンクリート基礎の厚み(丈)は35cm以上、かつ地中に少なくとも30cm以上埋め込むこと(根入れ)(※塀高さ1.2m以下の場合は大型の基礎不要)。

以上のような基準を満たすことで、地震時にも倒れにくい強度を持った塀となるわけです。裏を返せば、高さ1.2mを超えるブロック塀を築く場合には、厚みのあるブロックと十分な鉄筋、しっかりした基礎と控え壁による補強が不可欠ということです。なお、これらは昭和56年(1981年)の法改正以降の現行基準です。それ以前に造られた古い塀には、これらを満たしておらず危険なものもあるため注意が必要です。もしご自宅に古いブロック塀がある場合は、先述のチェックポイント(高さ、厚さ、控え壁の有無など)をぜひ確認してみてください。一つでも不適合があれば専門家に相談し、補強や撤去を検討することをおすすめします。

控え壁のデメリット:スペースと美観の問題

控え壁は塀の安全性を高めるうえで欠かせない構造ですが、一方でデメリットもあります。最大のデメリットは、敷地内のスペースを圧迫してしまうことです。例えば高さ2mの塀では、控え壁は少なくとも40cm以上は塀から突き出す必要があります。敷地が限られている場合、この控え壁のせいで庭が狭くなり、有効活用できるスペースが減ってしまいます。また、敷地内に飛び出したコンクリートの壁があることでレイアウトが制約されたり、美観上「出っ張り」が邪魔に感じられたりすることも無視できません。せっかく綺麗なデザインの塀やお庭を作っても、途中途中に控え壁があると見た目がゴツゴツして「スマートでない」と感じる方も多いでしょう。

そのため、実際の外構計画では控え壁を設けずに済むよう塀自体の高さを抑える選択をするケースも少なくありません。具体的には、ブロック塀はあえて1.2m以下の低めにとどめ、その上にフェンスや目隠しルーバーを設置して高さを稼ぐ方法が一般的です。ブロック部分を低く抑えれば控え壁は不要ですし、上部にアルミ製などの軽量フェンスを付け足せばプライバシーも確保できます。この方法なら庭を狭めることなく比較的高い目隠しが可能になるため、多くのご家庭で採用されています。ただし、フェンス部分はブロックほど目隠し性能が高くない(すき間がある)ものが多い点や、デザイン的に一体感を出すのが難しいケースもあります。「どうしても完全な目隠し壁が欲しいけれど、控え壁で庭が狭くなるのは困る」という方には、次に紹介する新しい工法による塀も選択肢となります。

控え壁なしで高い塀を実現するには?~TF WALLという選択肢~

「控え壁が邪魔だけど、高い塀が欲しい」というニーズに応えるべく開発されたのが、TF WALL(TFウォール)という新しいタイプの塀です。通常のブロック塀とは素材も構造も大きく異なり、特殊な発泡スチロール(EPS)を芯材とした軽量構造でありながら、高強度を実現した塀になります。塀全体が非常に軽量なため、建築基準法で義務付けられる控え壁を設けなくても安全性を確保できるのが最大の特徴です。実際、TF WALLであれば高さ1.8m(180cm)の塀でも控え壁なしで施工可能とされています。これは、従来のブロック塀では考えられない画期的なポイントです。

ではなぜTFウォールは控え壁が不要なのでしょうか?その理由の一つは、前述したように塀自体の重量が格段に軽いことにあります。従来のコンクリートブロック塀と比べ、TFウォールは1㎡あたり約235kgも重量が軽減されており、塀そのものが自重で倒れるようなリスクが大幅に低減されています。軽いため万が一倒壊してもブロック塀ほどの大事故になりにくいという安心感も得られます。さらに、芯材のEPSを特殊モルタル等で包み込む五層構造によって強度を確保しており、建設機械のショベルカーで押しても倒れないほどの頑丈さも備えています。つまり「軽いけれど非常に頑丈」という性質が、控え壁なしでも高い塀を安全に成立させる秘密なのです。

法律の面から見ても、TFウォールは問題なくクリアしています。建築基準法施行令第62条の8但し書きには「構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合」には上記の各種基準(高さ2.2mや控え壁設置等)によらなくてもよい旨が規定されています。TF WALLはまさにこの規定に沿って開発・設計された塀であり、独自の特許技術による構造計算・実験検証により、安全性が確認されています。そのため、法律上も控え壁なしで設置できる正式な構造として認められているのです。

加えて、TFウォールには他にも従来のブロック塀にないメリットが豊富にあります。例えば、「塀を高くしたいけれど本当は圧迫感も出したくない」という声に対しては、TFウォールの軽量性が有効です。従来のずっしりとしたブロック塀よりも軽やかな造りのため、高さ1.8mでも圧迫感を抑えられるデザインが可能です。また、EPSを芯材としている利点を活かし、波模様をつけたり透かし穴をあけたりといった自由な造形デザインも比較的容易です。ジョリパット塗装など多彩な仕上げにも対応できるため、単調なブロック塀より意匠性を高められる点も魅力でしょう。塀としての機能性・安全性と、景観を損なわないデザイン性の両立が図れるのがTFウォールなのです。

まとめ:安全性と快適性を両立した塀づくりのために

高い塀によるプライバシー確保や防犯性向上は、多くのご家庭にとって重要な外構のテーマです。しかしその一方で、塀は適切に造られないと大きな事故を招く危険もはらんでいます。本記事で解説したように、高さ1.2mを超えるブロック塀には控え壁などの補強が不可欠であり、それを怠ると法的にも安全上も問題があります。控え壁は安全のための有用な構造ですが、スペースや美観の制約といった課題も伴います。近年では、控え壁に頼らずとも**塀の軽量化・高強度化によって安全性を確保する技術(TFウォールなど)**も登場しつつあります。塀の計画を立てる際は、ぜひこうした新しい選択肢も視野に入れながら、「安全性」と「理想の暮らし」を両立できる方法を検討してみてください。

株式会社サトウ塗装は、塗装会社でありながら外構用軽量塀「TF WALL」の熊本県認定施工店でもあります。私たちはブロック塀の安全基準を熟知し、常に安全第一の施工を心がけております。お客様の大切な暮らしを守る安心・安全な塀づくりを全力でお手伝いいたしますので、控え壁のことや塀の高さについてご不明な点がありましたらどうぞお気軽にご相談ください。安全で快適な住まいづくりの一助になれば幸いです。TFウォールのご相談はこちらから承っております。

建築基準法などの引用元はこちらです

建築基準法施行令.第62条の8.https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/08/23/1420285_005.pdf,(参照 2025-06-29)

国土交通省 建築物の既設の塀(ブロック塀や組積造の塀)の安全点検について.「ブロック塀の安全点検のチェックポイント」.https://www.mlit.go.jp/common/001239762.pdf,(参照 2025-06-29)

いわき市.「ブロック塀等を建築される方へ」.https://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1529643082525/simple/kouzoukijunn.pdf,(参照 2025-06-29)